それは昭和四十五年一月の寒い早朝、私はせせらぎの音にふと目をさました。音のする場所に眠い目をこすりながら行ってみるとそこは庭の一角で、何もないはずの所にかすかに湯けむりを上げて川が流れている。おかしいと思いながらよく見ると見知らぬ老人が立っていた。
真白い顔に白い長いひげをした白衣の老人である。そして老人は顔を洗い出した。「おじいさんはどこの人ですか?」と私は尋ねたが老人は無言であった。私はその流れに手を触れてみた。
「わあお湯だ!」
その瞬間老人は白蛇になり、水の中を泳ぎ去ってしまった。
私ははっと目をさました。夢であった。
それから数年が過ぎ、ひょんな事から水のボーリングに取りかかる事になった時、私は温泉の夢を思い出した。業者とともに話を進めたが、家族は半信半疑だった。私はためらいもなく決意した。
そして一年有余の工事の結果、夢の温泉が湧出したのである。